うちは岩手で、冬の暖房はエアコンだけです。灯油ストーブは置いていません。
これを言うと、だいたい驚かれます。ここでは灯油が当たり前だから。「寒くないの?」「高くつくでしょ」と。
じゃあ実際どうなのか。感覚で語っても仕方がないので、公表されている数字だけで計算しました。2026年10月の最新価格で計算し直しています。
まず、灯油の値段(2026年10月の実データ)
資源エネルギー庁が、毎週、都道府県別の灯油価格を公表しています。2026年10月5日調査の岩手県はこう。
| 岩手県の灯油 | 18Lあたり | 1Lあたり |
|---|---|---|
| 店頭 | 2,512円 | 139.6円 |
| 配達 | 2,661円 | 147.8円 |
前回(9月7日調査)は岩手の店頭価格が東北で一番安かったのですが、今回は違います。宮城・山形より岩手の方が高く、真ん中あたりの順位になりました。
| 県 | 店頭(18L) | 配達(18L) |
|---|---|---|
| 岩手 | 2,512円 | 2,661円 |
| 宮城 | 2,483円 | 2,678円 |
| 山形 | 2,490円 | 2,723円 |
| 秋田 | 2,526円 | 2,643円 |
| 青森 | 2,557円 | 2,651円 |
| 福島 | 2,545円 | 2,727円 |
店頭だと安い順に宮城・山形・岩手・秋田・福島・青森。配達だと安い順に秋田・青森・岩手・宮城・山形・福島。どちらで見ても、岩手は6県の中でちょうど真ん中です。灯油の値段は毎週動くので、こうやって順位が入れ替わることもあるということです。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「石油製品価格調査」2026年10月5日調査分(都道府県別・税込。oil-stat.com掲載データで確認)
次に、電気の値段(2026年11月の改定後単価)
東北電力の従量電灯Bは、2026年11月1日に託送料金の変更分を反映して値上げしています(東北電力公式、2026年9月28日公表)。改定後の単価はこうです。
| 段階 | 1kWhあたり(改定後) |
|---|---|
| 第1段階(〜120kWh) | 31円01銭 |
| 第2段階(120〜300kWh) | 37円76銭 |
| 第3段階(300kWh〜) | 41円71銭 |
冬は暖房で使用量が跳ね上がるので、暖房で増えるぶんは改定後の第3段階・41.71円で考えるのが現実的です。
出典:東北電力「電気料金単価一覧表(2026年11月1日実施)」(2026年9月28日公表、2026年10月確認)
※この計算は電力量料金だけで出しています。実際の請求には燃料費調整額と再エネ賦課金が乗るので、電気は下の計算よりさらに高くなります。エアコン側に不利な要素を無視していない、とだけ言っておきます。
同じ「熱」に換算すると、いくらか
灯油と電気は単位が違うので、そのままでは比べられません。同じ量の熱を出すのにいくらかかるかに揃えます。
灯油1リットルの発熱量は36.7メガジュール。1kWhは3.6メガジュールなので、灯油1L ≒ 10.2kWh分の熱です。
石油ファンヒーターは排気も室内に出る開放式なので、発生した熱はほぼ全部部屋に入ります。
灯油:139.6円 ÷ 10.2kWh = 熱1kWhあたり 13.7円
エアコンは、仕組みが違います。電気1kWhを熱1kWhに変えるのではなく、外の空気から熱をくみ上げて、電気1kWhで何倍もの熱を運んでくる。この倍率がCOPです。
エアコン:41.71円 ÷ COP = 熱1kWhあたりの値段
分岐点は、やっぱりCOP 3.0前後
41.71 ÷ 13.7 = 3.04。
9月時点の計算では40.32 ÷ 13.4 = 3.01でした。灯油(店頭)は約2%、電気は約4%、それぞれ値上がりしましたが、分岐点のCOPは3.01→3.04とほとんど動いていません。両方が似たペースで上がったので、答え自体は変わらなかったということです。
つまり、こうなります。
| エアコンのCOP | 熱1kWhの値段 | 灯油(13.7円)と比べて |
|---|---|---|
| 2.0 | 20.9円 | 灯油が安い |
| 2.5 | 16.7円 | 灯油が安い |
| 3.0 | 13.9円 | ほぼ互角 |
| 3.5 | 11.9円 | エアコンが安い |
| 4.0 | 10.4円 | エアコンが安い |
| 5.0 | 8.3円 | エアコンが安い |
COPが3.0を超えていればエアコン、下回れば灯油。これが答えです。
ちなみに使用量が少ない家(第1段階の31.01円で収まる家)なら、分岐点はCOP 2.26まで下がります。電気を使う量が多い家ほど、エアコンは不利になるということです。暖房でガンガン使う冬は、そこに入ります。
で、岩手のCOPはいくつなのか
ここが問題です。
COPは外気温で変わります。外が暖かいほど熱をくみ上げやすく、寒いほど効率が落ちる。カタログの大きい数字は、たいてい外気温7℃のときのものです。
岩手の1月の朝は氷点下です。7℃の数字を見て買うと、話が違うことになります。
見るべきなのは、カタログの「暖房低温能力」という欄。外気温2℃のときにどれだけ能力が出るか、が書いてあります。ここが定格からどれだけ落ちるかで、寒冷地での実力が分かります。
寒冷地向けモデルは、ここが落ちにくいように作られています。本体価格は上がりますが、見るべきはカタログの一番大きい数字ではなく、この欄です。
正直に書くと、うちのエアコンの実際のCOPは測っていません。家庭で正確に測るのは難しい。だから「うちは得してます」とは言えません。言えるのは、分岐点が3.0前後だということと、それを判断する材料がカタログのどこにあるかまでです。
それでも、うちがエアコンだけの理由
コストだけで決めたわけではありません。
灯油は、買いに行って、運んで、入れる。冬の岩手でそれをやります。ポリタンクを車に積んで、雪の中を。空になれば、また。
スイッチひとつと比べたときに、その手間をゼロと数えるかどうか。うちはゼロと数えませんでした。
逆に、灯油にしかない強みもあります。立ち上がりの速さと、停電に強いこと。電池で着火する石油ストーブは、停電しても使えます。エアコンは電気が止まったら、ただの箱です。
岩手は、冬に停電する可能性がある場所です。そこを重く見るなら、灯油を残す判断は合理的だと思います。
まとめ
- 岩手の灯油は1L 139.6円(2026年10月5日調査・店頭)。熱1kWhあたり13.7円
- 東北電力の第3段階は2026年11月の改定後で41円71銭/kWh。熱1kWhあたりは41.71 ÷ COP
- 分岐点はCOP 3.0前後(今回は3.04)。9月の計算(3.01)からほぼ動いていない
- 灯油の県内順位は毎週動く。今回は岩手が最安ではなく、6県中ちょうど真ん中だった
- COPは外気温で落ちる。カタログは「暖房低温能力」を見る
- 電気には燃料費調整額と再エネ賦課金が別途乗るので、実際はエアコンがもう少し不利
- 停電時に使えるのは灯油。ここをどう見るかは、コストの外の話
どっちが安いかは、家によって変わります。「岩手だから灯油」でも「これからはエアコン」でもなく、自分の家の使用量と、自分のエアコンのカタログを見て決めるのが正解です。
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